言葉の誤用

文章を書くにあたって、気をつけなければならないことのひとつに言葉の誤用という問題がある。例えば、「汚名挽回」という表現は、一般には典型的な誤用として指摘される。「汚名挽回」では「汚名」を取り返すことになり、明らかな誤用だというわけである。ところが一方では、この定説に対して異議を唱える向きもある。「汚名挽回」とは「汚名を受けた状態から元に戻ること」を意味するものであって、決して誤用には当たらないという主張である。また、「酒の肴」という表現は、「肴」それ自体が「酒のつまみ」を意味するため重複表現となり、誤用であると指摘される。ところが、「サカナ」という発話を耳にした場合に生じる「魚」との混同を防ぐため、慣用表現として「酒の肴」は容認されるべきであるという主張もあり、その可否の判断の分かれるところである。言葉の誤用に関わる問題というものは、何とも悩ましい。

ともあれ、当ブログにおいては、言葉の正しい表現に努め、なんとか誤用は避けたいものである。しかしながら、そこに過度な厳密性を求めることは、必ずしも賢明なこととは思えない。必要以上に正誤の問題に囚われてしまえば筆は滞る。どうせ取るに足らない駄文である。些細なことに拘らず、気楽に文章を書き綴ることにしたい。――― 待てよ、この「取るに足らない駄文」も、「文章を書き綴る」も、ひょっとしたら重複表現?